富士通の本気・オープンイノベーションの本質

概要: 2月10日東京ミッドタウン日比谷内BASE Q で富士通株式会社が主催するFUJITSU ACCELERATOR第8期ピッチコンテストが開催された。会場には約300名近くの投資家・事業会社の投資担当者・新規事業担当者・オープンイノベーション担当が集まり、中にはシリコンバレーよりはるばる駆けつける者もいた。

富士通の本気・オープンイノベーションの本質

筆者はこれまで、事業会社向けにオープンイノベーションのコンサルティング事業を日米で行い、またその成功・失敗事例を見てきた。事業会社のオープンイノベーション担当が抱えるハードシングスには共通項があり、おおよその課題は事業会社のサラリーマンとベンチャー企業の起業家が互いの事情を理解していないことにある。事業会社は自社の次なる事業の開発を求め、またベンチャー企業は自社のエグジットを1パーセントでも高く上げることを目的としているが、それを理解し合うことは容易なことではない。

オープンイノベーションの本質とは、企業が互いに会社の垣根を超えて、次なる産業創出を狙うことである。しかしながら、これを理解した事業会社、またベンチャー企業は国内には、ごく僅かであり、誰もが知るようなブランディングのある事業会社のアクセラレーターですら、ベンチャー企業を集客するのに難航しているケースが多い。

事業会社のオープンイノベーションに対する巨額の投資(マネー)が紙くずとなっていることに業界内の人間は誰しもが呆れている。

会場は満席。質の高い起業家を集客。

そんなオープンイノベーションの暗雲がたちはばかる中、開催されたFUJITSU ACCELERATOR第8期ピッチコンテスト。イベントの集客数、また登壇して発表するベンチャー企業の質の高さは驚くべきものであった。またベンチャー企業も富士通の同企画を理解しており、富士通といかに協業したいかというプレゼンで富士通側の協業検討責任者(富士通の役員陣、富士通事業部の決裁権限者、富士通グループ会社役員陣)にプレゼンを展開する光景は、まさに、オープンイノベーションの本質と言える。

大手業の名刺に食いつかない起業家。それを理解する担当者。

前述の通り事業会社がオープンイノベーションを成功させるには何よりも起業家の思考を理解しなければいけない。ひと昔前までは大企業ブランディングで未上場の多くは、事業提携・協業したいと相手から縋るように連絡が来る時代であったが、今となってはその勢いは急速に失ったのではないだろうか。

その理由はGoogleやAmazonのような20年前には誰も知らなかった企業が破壊的イノベーションを生み出し、次々と既得権益を破壊することによって、未上場企業の経営者はその光景に憧れを抱き、スモールビジネス型から、急成長型のビジネスモデルに転換し始めたことが原因だ。

ベンチャー企業は週次成長7%を超えなければいけないと相場で決まっている。自社の企業価値を高めるためには受託型のスモールビジネスから急成長カーブを描くビジネスモデルを形成しなければいけない。単にワンショット型の売り上げではなく、持続的で継続的なビジネスモデルを生み出さなければいけない。

そのため大手企業の名刺に食いつくベンチャー企業は急速に減少した。

企業価値向上にコミット。協業による持続的な売り上げを作る。

しかしながら、FUJITSU ACCELERATORのチームはそれを理解し、ベンチャー企業が持続的に売り上げを生み出すモデルを協業という形で検討し、実現させる。ベンチャー企業からしても、企業価値を高めることができ、投資家にも事業会社のアクセラレーターに入ることへの理由づけをすることができる。

社運を賭けた富士通のプロジェクト。富士通時田社長が熱い思いを語る。

富士通代表取締役である時田社長が登壇。同社のオープンイノベーションへの熱い思いをプレゼンした。富士通はベンチャー企業では入り込めないネットワーク(行政や大手企業)を繋ぐ架け橋となることで日本の産業発展に貢献すると述べ、観客を沸き立たせた。

イギリス・ロンドンでの駐在経験のある時田社長。ドレスコードを自由化する等、社内に新たな風を吹き込ませている。また同社のコンピューター機器を中心としたものづくり経営を刷新して、*DX(デジタルトランスフォーメーション)企業への転換を発表したことでも話題となっていた。

*システムの開発のみならず、運用、コンサルまでワンストップで提供する新たなビジネスモデル

FUJITSU ACCELERATORは日本のオープンイノベーションを牽引するか。

時はオープンイノベーション戦国時代。大手企業が次々とアクセラレーターやCVCの組成を繰り広げ、ベンチャー投資の金額はここ数年急成長を遂げている。今年4月より1億円以上のベンチャー投資を優遇される税制ができ、その勢いは止まることを知らない。

事業会社がベンチャー企業の集客に難航するなか、同社のアクセラレーターのプレゼンスは間違いなく日本トップクラスと言えるだろう。

今後日本のオープンイノベーション領域を同社が牽引し、日本からより多くの新規産業が創出されることを願ってやまない。

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